確定拠出年金(DC)には運用指図者と加入者の2種類がありますが、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか?

実は加入者と運用指図者の間には大きな隔たりがあり、運用指図者には非常に大きなデメリットがあります。

以前は加入者となる条件が厳しく、やむなく運用指図者にならざるを得ない人も多かったのですが、2017年の法改正により、加入資格は大幅に緩和されました。
今現在運用指図者になっている人でも加入者になれる可能性は高く、もし条件を満たしているのならば、今すぐ加入者への変更手続きを行うことをおすすめします。確定拠出年金について検討中だという人も、運用指図者ではなく加入者になるのが良いでしょう。

今回は、運用指図者と加入者の違いや、加入者となるための条件や手続きの方法を紹介してゆきます。

◯運用指図者と加入者の違い
まず、確定拠出年金の運用指図者と加入者の主な違いは次の3点です。

1.掛け金を追加できるか
2.所得控除があるか
3.退職所得控除の勤続年数に含まれるかどうか

●掛け金を追加できるか
運用指図者と加入者の最も大きな違いは、掛け金が追加(拠出)できるかどうかという点です。

運用指図者とは、その名の通り、運用の指示(指図)のみができる人です。
口座にある資金をどの商品で運用するか、例えば投資信託にするか定期預金にするかということを決められます。
商品は選べますが、掛け金の拠出はできないため、資産を効率的に増やすことはできません。
一方、加入者の場合、運用の指図に加えて資金の拠出も行えるようになります。少ない資金から運用を開始し、様子をみた後に掛け金を増やしていくことができます。

また、資産の運用益は非課税のため、掛け金が大きいほど非課税のメリットも大きくなります。

●所得控除があるか
資産を増やす方法には2通りあります。
一つは入ってくるお金を増やすこと。もう一つは出ていくお金を減らすことです。
入ってくるお金を増やす方法には、昇進や転職で給料を増やすということや、資産の運用によって利益を得るなどがあります。
出ていくお金を減らす方法にはいくつかありますが、その中でも効率的で生活への負担が少ないのが節税です。

確定拠出年金の掛け金を増やせば所得控除を受けられますが、運用指図者は掛け金の拠出ができないため、所得控除によって税金を減らすことはできません。

●退職所得控除の勤続年数に含まれるかどうか
運用指図者となっている期間は退職所得控除を計算する際の勤続年数に含まれず、支払う税金が大きくなってしまう可能性があります。

退職所得控除額は次のように計算します。
・勤続年数20年以下の場合
40万円×勤続年数
(80万円に満たない場合、控除額は80万円)

・勤続年数20年以上の場合
800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば、勤続年数が25年の場合、800+70×(25-20)で控除額は1150万円です。
これが勤続年数40年になると控除額は2200万円になります。
このように、退職所得控除は勤続年数が長くなればなるほど大きくなります。

運用指図者の場合、掛け金の拠出ができないため、運用をしても資産が大きく増える可能性は低く、控除額が多少変わったところで大きな影響はないと考える人もいるかも知れません。
しかし、投資信託などを利用していた場合、最初の想定以上に資産が増える可能性もあります。たとえ元の金額が100万円でその後掛け金を追加しなかったとしても、年利3%で30年運用すれば資産は250万円近くになります。資産が大きく増えた場合、控除の枠が小さいと余分な税金を払うことになってしまいます。やはり退職所得控除が大きいに越したことはありません。掛け金を拠出するつもりがなかったとしても、運用指図者ではなく加入者になったほうが良いでしょう。

◯確定拠出年金の加入者になる方法
●加入者になるための条件
以前は確定拠出年金の加入者になる条件が厳しく、運用指図者にしかなれない人が多かったのですが、2017年1月の法改正後は公的年金を支払っている人ならばほとんどの人が条件を満たすようになりました。

確定拠出年金の加入者になるための主な条件は次の通りです。
・15歳以上60歳未満
・国民年金の被保険者である
・国民年金保険料の免除者・猶予者ではない
・生活保護を受けていない
・農業者年金の被保険者でない
・国民年金の任意加入者でない

法律が改正される前の2016年以前に確定拠出年金の運用指図者となった人の中には、現行の加入者資格を満たしているのにもかかわらず運用指図者のままでいる人もいます。もし現在運用指図者になっているのであれば加入者資格を満たしているかどうかの確認を行ってください。

●運用指図者になる場合
確定拠出年金の加入者ではなく、運用指図者となるケースには3通りあります。

1.自ら希望して運用指図者になる
2.確定拠出年金の加入者が60歳以降も口座を保有し続ける
3.確定拠出年金の加入者が途中で加入者を失う

まず、自ら望んで運用指図者になることもできます。
加入者に圧倒的メリットがあるため、わざわざ運用指図者を選ぶ理由はないと思いますが、一応自分の意志で決定できる仕組みになっています。

次に、確定拠出年金の加入者が60歳以降も口座を保有し続けた場合。
加入資格があるのは60歳までですが、運用指図者は70歳までです。60歳を過ぎても口座を保有し、運用を続けることが可能です。ただし、70歳になると運用指図者の資格も失うため、口座から資金を引き出さなくてはなりません。

そして3つ目が、加入者が運用途中で加入資格を失ったケースです。
ちなみに、国民年金が未納でも確定拠出年金の運用指図者になることは可能ですが、未納月は掛け金を支払うことができません。

●2017年1月よりも前に運用指図者になった人は加入資格を確認
すでに述べたように、確定拠出年金の加入資格は2017年1月に大幅に緩和されました。これによって以前は加入者になれず運用指図者になってしまった人でも、加入者になれるようになりました。
しかし、加入条件が緩和されたにもかかわらず、運用指図者のまま放置している人も少なくありません。加入者のほうが圧倒的にメリットは大きいです。該当する人は自分がどちらなのか、加入資格があるかどうかを確認しましょう。

また、2016年12月以前に企業型の確定拠出年金に加入していた人が転職したり退職した場合や、自営業で個人型確定拠出年金に加入していた人が転職したり結婚したりした場合は、自分が運用指図者であることを忘れている場合もあります。心当たりのある人は、一度関係書類を見直してみましょう。

●運用指図者から加入者になるための手続きは?
確定拠出年金の加入者に変更するためには、運営管理機関(証券会社など)に「個人型年金加入申込書」を提出する必要があります。また、運用指図者が別の運営管理機関で加入者となる場合には、加入申込書に加えて「加入者等運営管理機関変更届」も必要です。
書類については各公式サイトからダウンロードできるようになっているところが多いです。わからない点や疑問点があれば各機関に直接問い合わせたほうが安心です。
加入や変更の手続きには2ヶ月ほどかかります。時間のかかる手続きのため早めに書類を提出しましょう。

●確定拠出年金の解約・脱退
確定拠出年金の運用指図者が解約したり脱退したりするのは非常に難しいです。
掛け金を拠出できないのならやめてしまおうと考えている人も中にはいるかも知れませんが、加入者となる条件が大幅に緩和された代わりに、やめるのは非常に難しくなりました。

運用指図者が個人型確定拠出年金をやめるためには次の条件を全て満たす必要があります。
・保険料免除者である
・障害給付金の受給権がない
・通算拠出期間3年以下、もしくは個人別管理資産額25万円以下
・企業型DC、個人型DC(iDeCo)の資格を喪失してから2年以内
・企業型DCの脱退一時金の支給を受けていない

このように運用指図者が確定拠出年金を抜けるのは非常に難しく、「やめたい」と思っただけで早めることはできません。

ただ、たとえ加入者とならず運用指図者のままでいた場合も、積極的に確定拠出年金から抜けるメリットはありません。60歳になるまで引き出せないという欠点はあるものの、iDeCo口座で運用を続けたほうが資産は増えますし、再び加入資格を満たす可能性もあります。確定拠出年金は税制面でも非常に優遇されているのもメリットです。
もし運用指図者をやめられる条件を満たしていたとしても、今すぐお金が必要という人以外は解約しないほうが良いです。

◯確定拠出年金の加入者・運用指図者の注意点
●企業型DCの資格喪失者は早めに手続きが必要
企業型DCに加入していた場合、退職や転職をすると加入資格を失います。
この場合、必ず6ヶ月以内にiDeCoへ移管する手続きを行いましょう。

企業型DCの資格喪失後、6ヶ月を経過すると資産は国民年金基金連合会に自動で移管されます。
国民年金基金連合会に移管されると、資産が現金化されるため、運用はできなくなります。また、自動移管の際には手数料として4,269円が発生します。資産を再びiDeCoや別の企業型DCに戻す場合もまた手数料がかかります。しかも、手数料がかかるだけでなく毎月51円の管理手数料を取られてしまいます。
そのうえ、国民年金基金連合会で管理されている期間は老齢給付金のための通算加入者等機関に合算されません。移管により、受け取り開始が遅れてしまう可能性もあります。

企業型DCからiDeCoへの手続きにはおよそ1ヶ月かかるため、実際の期限は5ヶ月です。企業型DC加入者は退職後すぐに確定拠出年金の手続きを行うようにしましょう。

●確定拠出年金の利益は扶養に影響しない
専業主婦が運用指図者になるうえで気になるのが、運用利益の確定が扶養基準に関係するかどうかです。

確定拠出年金の口座内で発生した利益は非課税です。つまり、本人の所得には影響せず、扶養の基準にも関係ありません。
専業主婦でも安心して確定拠出年金を始められます。

◯確定拠出年金は老後の資金を貯める一番の方法
安定した老後の生活のためには貯金が必要です。
年金だけでは生活はできません。老後世代の生活費は平均でみても赤字で、ほとんどの人が貯金を崩しながら生活しています。

幸か不幸か日本人の平均寿命はどんどん伸びています。医療の進歩だけを考えるなら、今後もっと寿命は伸びてゆくでしょう。
定年の見直しや再雇用の活性化などで、高齢者も働ける社会にシフトしてはいるものの、同時に医療も進歩しているため、病気や事故で働けなくなった後の人生も同じように伸びています。生涯現役の心づもりでいても貯金は必要です。
これまでの年金制度だけでは到底高齢者を支えきることはできません。確定拠出年金の制度がどんどん便利になっているのも、自分の老後の生活費は自分で貯金するようにという政府の方針を受けたものです。

老後の資金を貯める方法は、確定拠出年金の他にも、積立NISAや民間の個人年金保険があります。これらにもメリットはありますが、税制面で大きな優遇を受けているのは確定拠出年金です。

実際、個人型確定拠出年金(iDeCo)の運用指図者は年々増加しています。
企業年金連合会の運営管理機関連絡協議会のデータによると、2007年の運用指図者は約6万7千人。底から運用指図者は右肩上がりに増え続け、2016年には47万3千人にもなっています。

●確定拠出年金の金融機関の選び方
iDeCoを取り扱う金融機関はいくつもありますが、どんなふうに金融機関を選ぶのが一番良いのでしょうか。

金融機関を選ぶ際のポイントは次の4つです。
1.口座管理手数料が安い
2.投資信託の商品が揃っているか
3.投資信託の信託報酬率が低い
4.受け取り方法が豊富

投資信託の商品については、単純に数の多さだけでなく、各資産クラスで複数の選択肢があることが大切です。
特に、マネックス証券やSBI証券、楽天証券の3つの金融機関はどれもポイントを抑えている、おすすめの金融機関です。
この3つの中で最も信託報酬率が安いのはマネックス証券ですが、それ以外の点については大きな差はありません。3社は顧客獲得を争う関係のため、どれか1社が新しいサービスを始めたりサービスの改良を行ったりすれば、他の2社もそれに何らかの対抗策を打ち出してきます。そのため、ポイントを抑えているのならば、後は好みで金融機関を選んでも問題ありません。